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取り組み

意味ある人生,誰もが挑戦者
お子さんのサポーターの一つ“赤ちゃん成育ネットワーク”

おぐちこどもクリニック
 小口弘毅

“赤ちゃん成育ネットワーク:Network for Infant Health and Development”の自己紹介をいたします。赤ちゃん成育ネットワークは、新生児医療を経験した開業小児科医あるいは病院勤務の小児科医の全国ネットワークとして2002年に立ち上げられました。私達は、NICU(Neonatal Intensive Care Unit :新生児集中治療室)で長く重症新生児の診断治療に専念してきました。新生児医療を経験した小児科医は、NICUという、生と死が常に隣り合っている病棟での肉体的にも精神的にも苛酷な勤務体験に加えて、重度な先天異常や奇形、あるいは周産期仮死に由来する脳障害児の治療あるいは生命倫理的な問題に常に直面してきました。そしてその子達の退院後の成長を見守り、地域での成育支援に関わった経験を共有しています。外来でNICU卒業児の地域での成育を見守ってきた私達は、徐々に医療と医療施設は発展したけれど、重症新生児の地域に於ける“受け皿”があまりにも貧弱である事に気がついてゆきました。新生児医療から離れて開業医として一般小児医療に従事するようになり、その事を改めて認識し、何かをしなくてはという思いに駆られていました。

過去数十年間の新生児医療の進歩は目覚ましく、その恩恵に浴して多くの重症新生児の救命率は劇的に改善してきました。しかしながら、如何に進歩した医療によっても、根本的には治療し得ない様々な先天的な病気や異常を持ったこども達に遭遇し、その子達の退院後の成育支援を行ってきました。障害を持ったこども達の育児はともすると医療が優先となり、介護に明け暮れる日々となってしまいがちですが、その中で私達が最もこころを砕いた事は、こども達のゆっくりとではありますが、一歩一歩成長してゆく姿をご両親と共に喜び、そして見守る事でした。しかし様々な困難に行く手を阻まれて、ご両親とともに悩み苦しみ、無力感に苛まれる事も少なくありませんでした。このような経験を通して、私達はどのような障害を持って生まれてきても、その子なりに成長してゆく事を確信する様になりました。様々な障害や困難を抱えていても、こども達は“命の輝き”を解き放ち、そして個性を発揮するようになります。

朝日新聞の声欄に掲載されたダウン症のある子どもの親からの投書を紹介します。『意味ある人生,誰もが挑戦者:私の7歳の息子もダウン症を持って生まれてきました。私達家族は息子をチャレンジャーと呼び,難しい人生の試練に挑戦する為に生まれてきた事を誇りに思って育てています。人生には、きっと自分で越えられない試練などありません。よほどの理由があって、この人生を生きている。そう考えると、生きる力が湧いてきます。今とてもつらい思いをされている方々も“人生に起こることは、必ず意味がある”と信じ、試練を乗り越えていただきたいと願ってやみません』 この投書を心に留めて、私たちも応援メッセージを発信してゆきたいと思います。“赤ちゃん成育ネットワーク”は、新生児医療の経験を有する小児科開業医と医療関係者の全国的規模の会であり、多様な疾患を抱えて成長発育してゆくこども達と家族の地域での生活支援を目指しています。

新生児医療から離れた私達の多くは、その後もNICU卒業児の力になりたいという思いを抱いて各地で独自に地道な診療を続けていたのです。新生児OBである約200人の私達小児科医の思いは全国規模のネットワークに集められ、一つの大きな目標を持つ事になりました。それはNICU卒業児のみならず医療的なケアを必要とする多くの重症児の地域における“受け皿”になる事です。一つ一つの“受け皿”は小さいかもしれませんが、全国の会員が集まれば大きな“受け皿”になると思います。専門医と連携してお子さん達の、近くのかかりつけ医として、微力ながら、医療的ケアのみならず成育支援を行ってゆきたいと願っています。お母様は決して独りではないのです。地域の様々な福祉施設、教育関係者など、そして私達医療者は、いつもあなた方のそばにいて力になりたいと願っています。その中の一つとして“赤ちゃん成育ネットワーク”のことも思い出して下さい。人生のある時期に新生児医療に没頭し、多くの赤ちゃん達の生命に向き合ってきた個性豊かな会員達は、ユニークな小児医療を展開していますので、どうか“赤ちゃん成育ネットワーク”のHPをご覧下さい。

更新日:2017年6月1日